春は眩しくて、届かない


帰ろうとした時だった。


玄関の灯りが、ふたりの影を細く伸ばしている。


陽奈が「また明日ね」って笑おうとした、その前に。



「……ひな」



陽奈が振り返る。



「ん?」



数秒、沈黙。


それから、わたしは小さく笑った。


泣きそうなくらい、やわらかい顔で。



「ひな、わたしのヒーローになってくれてありがとう」



陽奈の目が、静かに揺れる。



「……え」



りのんはゆっくり続ける。



「私ね、ずっとひなに助けられてた」



風が、夜の匂いを運ぶ。



「いじわるされていた時も」



「クラス馴染めなくてしんどかった時も」




「家のことで落ち込んだ時も」



陽奈はいつも隣にいた。


明るくて。
まっすぐで。
勝手に人の孤独を見つけてしまう人。



「ひながいたから、学校好きになれたし」




「毎日楽しかった」



陽奈の喉が、小さく震える。


りのんは少し照れたみたいに笑う。


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