春は眩しくて、届かない
親友の幸せ 陽奈Side
玄関のドアを閉めたあとも、しばらく動けなかった。
背中を預けたまま、ゆっくり息を吐く。 なのに胸の奥だけが、全然静かになってくれない。
——陽奈、わたしのヒーローになってくれてありがとう。
りのんの声が、何度も頭の中で響く。
「……なに、それ」
小さく呟く。 でも次の瞬間、また涙が溢れそうになって、陽奈は慌てて目を擦った。
私は、りのんを傷つけたのに。
柏木くんを好きになって。 気づいてたくせに。 りのんの優しさに甘えて。
最低だって、ずっと思ってた。
なのにりのんは、 そんな自分に向かって“ヒーロー”なんて言った。
意味が分からない。
優しいとか、そういうレベルじゃない。
「……ずるいよ、りのん」
泣きそうに笑う。