春は眩しくて、届かない
リビングからお母さんの声が聞こえたけれど、 今は返事をする気力がなかった。
階段を上がって、自分の部屋に入る。
制服が掛かった椅子。 開きっぱなしのノート。 3日間、止まったままの時間。
ベッドに座った瞬間、スマホが震えた。
画面を見る。
『明日7時半に迎え行く』
『寝坊禁止』
りのん。
陽奈は思わず吹き出した。
涙が残ってるせいで、変な笑い声になる。
「……なにそれ」
ほんとに来る気なんだ。
少し前まで、 “明日学校へ行く”ってことが怖かったのに。
今は不思議と、 その時間を想像できてしまう。
朝、りのんが家の前で待っていて。 たぶん眠そうな顔で「おはよ」って言って。
コンビニ寄って。 くだらない話しながら歩いて。
そんな、いつもの朝。
その想像だけで、 胸の奥が少しあたたかくなる。
陽奈はスマホを握りしめたまま、天井を見る。