春は眩しくて、届かない
「りのんはさ」
「うん?」
「変に飾んない方が絶対いい」
真面目な声で言う。
「りのんって、ちゃんとまっすぐ言葉にした時が一番強いから」
りのんが少しだけ目を丸くする。
「教室にりのんがきたときとかさ」
「柏木くん、めっちゃりのんみてたきがする!」
「……ほんと?」
「ほんとほんと」
少しだけ胸が痛む。
でも、嘘じゃない。
柏木くんがりのんを見る目を、 わたしはちゃんと知っていた。
だからこそ。
「たぶんね」
「りのんが“好き”って言ったら、ちゃんと届くよ」
りのんが静かにわたしを見る。
朝の光の中で、 その目だけが少し揺れていた。