春は眩しくて、届かない
柏木くんは目を逸らしたまま、 小さく息を吐く。
「……ごめん」
「今の、母親」
その声が、 少しだけ掠れて聞こえた。
りのんは胸の奥がきゅっとなる。
柏木くんって、 いつも余裕そうだった。
ちょっと眠そうで、 何考えてるか分からなくて。
でも今は、 ちゃんと苦しそうだった。
「実は」
「母親とうまくいってなくて」
その言葉に、 小さく眉を下げる。
「……大丈夫?」
聞きながら、 “変な聞き方だったかな”って少し不安になる。
でも柏木くんは、 少しだけ笑った。
「大丈夫そうに見える?」
「見えない」
即答すると、 柏木くんがほんの少し吹き出した。
その笑い方に、 少しだけ安心する。
少し考えてから、 静かに言った。
「でも」
「ちゃんと、お母さんと話した方がいいと思う」
柏木くんがこちらを見る。
りのんは続けた。
「うまくいかなくても」
「ちゃんと話さないと、ずっと苦しいままな気がするから」
自分でも、 うまく言えてるか分からない。
でも。
柏木くんには、 苦しいままでいてほしくなかった。