春は眩しくて、届かない


小さく息を吸って、
通話ボタンを押す。


コール音。


1回。
2回。


3回目で、
電話が繋がった。



『……もしもし』



母親の声。


昼間より、
ずっと静かだった。


壁にもたれながら口を開く。



「……夜に悪い」



『別に』



短い返事。


でも、
切ろうとはしない。


沈黙が落ちる。


前ならここで、
お互い意地を張って終わっていた。


でも今日は、
俺から先に言った。



「昼間は悪かった」



電話の向こうで、
息を呑む気配がする。



『……ううん』



また沈黙。


それから、
母親がぽつりと零した。



『湊、ちゃんと食べてるの』



思わず苦笑する。



「そこ?」



『そこよ』



少しだけ、
昔みたいな声だった。


目を閉じる。


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