春は眩しくて、届かない
柏木くんはシャーペンを置く。
「学力はあるんだろうしなんでもできるだろ」
「うーん……」
視線を落とす。
「わたし何がしたいかわからなくて、、」
柏木くんは数秒黙ってから、 椅子にもたれた。
「別にいいんじゃね」
「え」
「最初から全部決まってる奴の方が少ないだろ」
図書館の静かな空気の中、 その声だけがゆっくり落ちる。
「今悩んでるなら、ちゃんと考えてるってことじゃん」
目を瞬く。
柏木くんは相変わらず、 大きな励まし方はしない。
でも時々、 こういうふうに真ん中をまっすぐ言う。
少しだけ笑った。
「……柏木くんって、たまに先生みたい」
「嫌すぎる」
即答。
その笑い声を聞いて、 柏木くんも少しだけ口元を緩めた。
進路希望調査書は、 まだ全部は埋まっていない。
でもわたしは、 さっきより少しだけペンを持ちやすくなっていた。