春は眩しくて、届かない


誤魔化すみたいに鞄の紐を握る。


これ、
なんだろう。


ただ帰るだけ?
相談?
それとも。


頭の中がぐるぐるして、
うまく考えられない。


すると後ろから突然、



「うわ」



聞き覚えのある声。


振り向くと、
陽奈が立っていた。


しかも、
めちゃくちゃにやにやしている。



「え、なにこの空気」



「ひな!?」



「ごめんごめん、
通りかかっただけなんだけど」



絶対嘘だ。


陽奈はわたしと柏木くんを交互に見て、
口元を押さえる。



「へぇ〜」



「その顔やめて!?」



「いやだって、
柏木くんから“今日時間ある?”ってかなりイベントじゃん」



「鈴野一旦静かにして」



柏木くんが少し呆れた声を出す。


でも耳がちょっと赤い。


陽奈はそれを見逃さなかった。



「え、待って、
柏木くん照れてる?」



「うるせぇ」



「りのん!!
赤い赤い!!」



「ひなぁ……!」




廊下で陽奈の笑い声が響く。


柏木くんは困ったみたいに笑って、
それから小さく言った。



「……じゃあ、
放課後昇降口来て」



その言葉だけで、
胸はまた熱くなる。



「……う、うん」



柏木くんが去っていく。


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