春は眩しくて、届かない


ふたりで並んで歩き出す。


夕方の道。
春の匂い。
遠くで鳴くカラスの声。


沈黙なのに、
嫌じゃない。


むしろ、
隣にいるだけで胸が忙しい。


ココアを両手で持ちながら、
小さく笑う。



「なんかさ」



「ん?」



「柏木くんとこうやって帰るの、
前は想像できなかった」



柏木くんが少しだけ吹き出す。



「俺も」



その短い返事が、
なんだか嬉しい。


風が吹いて、
桜が揺れる。


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