春は眩しくて、届かない
ふたりは並んだまま、
静かな住宅街を歩いた。
春の夕方は、
冬より少しだけ空が長い。
オレンジ色の光が道路を照らして、
遠くで小学生の笑い声が聞こえる。
ココアを両手で持ちながら、
ちらっと柏木くんを見る。
隣を歩く横顔。
前より自然に話せるようになったのに、
こうしてふたりきりになると、
やっぱり少し緊張する。
「……どこ行くの?」
聞くと、
柏木くんは少し前を向いたまま答えた。
「んー……もうちょい」
その言い方が、
なんだかずるい。
「なにそれ」
「着いたら分かる」
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