春は眩しくて、届かない
「……というかさ」
「ん?」
「水瀬、 俺のこと名前で呼んで」
わたしは固まる。
「……え」
「ずっと柏木くんって、」
「だ、だって急に無理……!」
「なんで」
柏木くんは少し楽しそうに笑う。
「付き合ったのに」
その言葉だけで、 顔が一気に熱くなる。
付き合った。
改めて言われると、 破壊力がおかしい。
視線を逸らしながら、 制服の袖をぎゅっと掴む。
「……むり」
「水瀬」
「……っ」
「一回だけ」
ずるい。
声がやさしい。
断れない。
数秒黙り込んで、 それからものすごく小さい声で。
「……みなと、くん」
言った瞬間、 顔が熱すぎて死にそうになる。
絶対真っ赤。
でも。
隣から、 小さく息を飲む音が聞こえた。
恐る恐る顔を上げる。
すると柏木くんは、 珍しく少し固まっていた。