春は眩しくて、届かない


窓際から少し離れた、一番端の席。


荷物を置いて椅子を引こうとした、そのとき。



「……水瀬、だよな?」



低い声がして、りのんは振り返る。


そこに立っていたのは、やっぱり柏木湊だった。



「……柏木くん」



柏木くんは片手に参考書を持ったまま、少し眠そうな目でこちらを見る。



「やっぱり。隣いい?」



小さく頷くと、柏木くんは隣の席に座った。



「いつもここ?」



「……うん、まあ」



「へえ」



それだけ言って、少しだけ笑う。



図書館特有の静かな空気のせいか、学校で話す時より声が近く感じた。



「柏木くんも、図書館でするんだね」



わたしが小さく言う。



「友達と学校で勉強してるのかと思ってた」



その言葉に、柏木くんらは少しだけ眉を上げた。



「俺、そんなイメージ?」



「……なんとなく」



困ったみたいに笑うと、柏木くんは小さく息を漏らした。



「学校はうるさいし」



そう言いながら、手に持っていた参考書を軽く揺らす。



「俺、意外と真面目に勉強したいんだよ」



「意外と、って自分で言うんだ」


思わず返すと、少し笑った。



「水瀬も思っただろ」



「……ちょっとだけ」



正直に答えると、柏木くんは


「やっぱりな」と肩をすくめる。


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