春は眩しくて、届かない
図書館の窓から、夏の光が差し込んでいた。
静かな空気の中で話していると、学校で見る柏木くんより少しだけ距離が近く感じる。
「水瀬は?」
「え?」
「いつもここで勉強してんの?」
「……うん。落ち着くから」
わたしがそう答えると、柏木くんは窓際へ目を向けた。
「わかる」
小さく落ちたその声が、なぜか少しだけ嬉しかった。
「……でも鈴野と一緒じゃないんだ」
「え?」
「なんか、いつも一緒にいるイメージ」
その言葉に、りのんは少しだけ目を瞬く。
「大体は一緒にいるけどテスト期間ひなは塾だから」
「あー」
湊は納得したみたいに頷いて、それから少し笑った。
「鈴野、なんでもできそうだけど勉強だけは危なそうだよな」
「ふふっ。」
思わずりのんが吹き出す。
「勉強はね」
「やっぱり?」
「この前も“気持ちはもう追試”って言ってたし」
「なにそれ、鈴野っぽすぎ」
柏木くんは肩を揺らして笑う。
図書館だから、お互い小さな声なのに。
不思議なくらい、会話は自然に続いていった。
陽奈の話をしているだけなのに、 なぜか少しずつ柏木くんとの距離まで近くなっていく気がした。