春は眩しくて、届かない

うわさの人気者 湊Side



新しいクラス特有の浮ついた空気。


正直、少しうるさい。


そんな中で、一番最初に目に入ったのは、よく通る笑い声だった。



「ほんとだ、同じクラスじゃん!」



ーー鈴野陽奈。



周りの男子が、“明るくて可愛い”とよく話しているのを聞いたことがある。


誰とでもすぐ打ち解けて、いつも楽しそうに笑っている女子。


……たしかに、教室にいたら自然と目に入るタイプだった。



「……騒がしいクラスになりそうだな」



ぼそっと呟くと、近くの男子が吹き出した。



「お前が言う?」



「柏木いる時点で十分目立ってるって」



「また校舎裏呼ばれるんじゃね?」



「それはもう毎年恒例だろ」



好き勝手言われても、湊は特に否定しなかった。


面倒そうに机へ突っ伏しながら、小さくため息をつく。


そんな空気の中でも、鈴野だけはずっと楽しそうだった。


初めて同じクラスになったはずなのに、もう昔からここにいたみたいに笑っている。



「ねえ、席どこ!?」


「え、近っ!」


「まじ!?やったー!よろしく!」


明るい声が教室に広がるたび、周りまでつられて笑っていた。


――すごいな。



自分には、多分できない。


あんなふうに、最初から誰かの中心に立つことなんて。


そのとき。


鈴野がふとスマホを見下ろした。


さっきまで笑っていた表情が、一瞬だけやわらかく変わる。



「……りのん、大丈夫かな」



小さな声だった。


でも、なぜかその名前だけは、湊の耳に残った。


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