【新作】財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて
『私と遊んでいたメイドは、1時間経っても私が見つからないものだから、流石に焦ってメイド長に相談したの。それで、執事や運転手も含めて使用人総出で屋敷の中や庭、ガレージをくまなく探して、2時間後に執事長である優斗のお父様が倉庫の中で気を失って倒れていた私を見つけてくれた。私はすぐに病院に連れて行かれて、次の日の夜に目を覚ましたの。まだ恐怖が体に残っていて、何があったのか上手く話せない私を、執事長は優しく看病してくれた。その次の日にはお兄様たちも病院に来て、精神科医の治療を受けて屋敷に戻ったの。』
『今でも激しい雨と雷の音を聞くと、あの時の恐怖が蘇ってくるの。いつも付き合わせちゃってごめんなさい。』
……俺は、六花のことを誰よりもよく知っている自負があるし、誰よりも長く側で六花をみてきた。それなのに、数年後には出会ってから日の浅い道明寺に嫁いで行く六花を笑顔で見送らなきゃいけないだなんて。
この前、六花の恋愛本を没収しかけた日、俺は久しぶりに六花とまともに話せた喜びで舞上がって、勝手に自分に良いようにその『訳』を勘違いしてしまった。
でも、話を聞く限り、六花は道明寺翼に恋をしている。俺は道明寺翼も六花に恋してるんじゃないかと思っている。だって、六花と1ヶ月も一緒に生活して、六花を好きにならない男なんてこの世界には誰もいないと思う。
これを、俺は喜ぶべき。六花が好きな人と結婚して、幸せになれるんだから。
俺はこんなに六花のことを好きなのに、なんで六花は俺のことをなんとも思ってないんだろう。
腕の中ですやすやと寝息を立て始めた六花をみながら考えてしまう。今だって、六花のベッドに2人で抱き合って寝そべっていて、俺の心臓ははち切れそうなほどにバクバクと荒々しく鼓動を繰り返してるのに、六花は穏やかに眠ってしまった。
年頃の男を自分のベッドに自らあげるとか、警戒心がないにも程があんだろ。こっちは理性で必死に抑えてるってのに。
……それとも、俺は男としてみられてないのか?
【side 優斗 fin】