【新作】財閥令嬢の私が、三つ子の不良御曹司に世界を教えられるなんて
【side 翼】

俺は基本的に人を簡単には信用しない。

経済の中核である財閥界隈では、取引相手の真意を読み取る力、平等と見せかけてこちら側に利益が多く回るように取り付ける協定や同盟など、単なる経営力だけではないものが、大きく勢力図に影響する。

だから、基本的に人は信用してはいけない。

そう、小さい頃から叩き込まれてきた。

ましてや財閥同士の政略結婚なんて話になれば尚更。

父さんは六花を気に入っているようだが、俺はまだそこまでではない。

確かに性格は思ったよりまともだ。

高慢でもない。

意地悪でもない。

むしろ妙に素直だ。

でも、それだけで信用できるほど俺は甘くない。

西園寺側から、正式な婚約前に道明寺の内部情報を探るように命令されているのかもしれないし。

フードコートの席で向かいに座る六花を見ながら、俺はそんなことを考えていた。

六花は蓮が買ってきたパスタを前にして、まだ食べ始めていない。

というより、相変わらず周囲を観察している。

子供か。

「冷めるぞ」

俺が言うと、

六花は慌ててこちらを見た。

「あっ、ごめんなさい」

誰に謝ってるんだ。

その時だった。

ピリリリリ。

突然、電子音が鳴る。

六花が肩を震わせた。

どうやら着信らしい。

六花は慌てて立ち上がろうとした。

「失礼します」

しかし俺は即座に止める。

「座ったままでいい」

六花がきょとんとする。

「でも……」

「警護が面倒になる」

後ろにはボディーガード。

周囲には一般客。

六花が勝手に動けば護衛も動かないといけない。

何かあった時のためにも、西園寺家から預かっているコイツには単独行動は避けてもらうべき。

「ここで出ろ」

六花は少し迷った後、素直に頷いた。

「分かりました」

そして鞄を開く。

その瞬間だった。

俺。

蓮。

碧。

三人同時に固まる。

「……は?」

最初に声を漏らしたのは蓮だった。

六花の手の中にあったのは。

スマートフォンじゃない。

俺は思わず二度見する。

見間違いじゃない。

本当にガラケーだ。

蓮も固まっている。
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