色褪せて、着色して。Ⅷ~スノードロップ編~
 さっきまで、心臓がバクバクしていて。
 今も緊張と嬉しさでドキドキしているというのに。
 太陽様の発言にイラッとしたかと思えば。
 意味の分からない謝罪に戸惑いを覚える。
「いくら仕事とはいえ、セシルさんの大事な日を投げ出すなんて。人として俺は失格です」
「いえ…。急にどうしたんです?」
「仕事だからオーロラ姫のところに戻ろうとはしたんですけど。胸騒ぎというか、これは駄目だって頭で警報が鳴って…だから、戻っったんですけど。まさか、目の前で連れ去られるとは…」
「目の前?」
 あの日、太陽様は戻ったの?
「え、もしかして。私に危ないって言ったのは太陽様?」
「そうっす」
 …そんなことある?

 目を見開いて太陽様を見つめる。
 太陽様と目が合う。
 真剣そのものだ。
 この人はいつでも真面目で、嘘を着けない人で…。
「すぐにローズ様だって思いました」
「へ?」
 太陽様は右手をぐーにして太腿を2回ほど叩いた。
「ウラの仕業だっていうのはすぐにわかりましたよ。だからすぐにローズ様のところへ…」
「あの、すいません。ちょっと待ってください」
 私は立ち上がって、周りをきょろきょろと見回した。
 人の姿はない。
「あ、すいません。ウラというのはなんでしょうか?」
「ウラっていうのは、国家騎士なんですけど…集団と言うか、なんというかウラなんです」
「…はい」
 もごもごと説明する太陽様を見ていて。
 なんとなくだけど、説明できない組織なんだろうな…というのを悟った。
「えーと、そのウラというグループ? の人達はローズ様に命令されて私を連れ去ったと?」
「はい。だから俺はローズ様のところへ行って。問い詰めましたよ」
「問い詰めたんかい…」
 相手は国王だというのに…。
 この人は本当に怖いもの知らずだ。

「そうしたら、ちょっと彼女に確認したいことあるから心配するなって。だったら、連れ去る必用ないっすよね?」
「…ええ。しかも連れ去られた上に・・・」
 言いかけて、太陽様の目がバニラと同じような目つきだったので。
 言うのをやめた。
 本気で太陽様は怒っている。
 温和というか…私の前では一切、怒っている姿を見たことがなかったので。
 背筋がぞくっとしてしまった。

「あの。太陽様、私はてっきり連れ去ったのは蘭殿下の命令かと思っていました」

 重たい空気の中、話を変えようと。
 考えていたことを質問する。
「蘭殿下? 何故?」
「えっ。だって、私。蘭殿下にめちゃくちゃ嫌われてるんですよ? 連れ去るとしたら、絶対に蘭殿下しかいないでしょう?」
「セシルさん。蘭殿下は国家騎士団に一切、口出しは出来ない存在なんすよ」
 怒りが少しはおさまったのか、半笑いで太陽様が言った。

 人の気配は一切ない。
 私と太陽様の2人きりにの空間。
「そうなんですか?」
「ええ。そういう決まりだってローズ様が言ってました」
 ふぅ…と。
 ここで初めて太陽様がため息をついた。
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