色褪せて、着色して。Ⅷ~スノードロップ編~

「マヒル様。お茶でもいかがですか?」

 妖精って自己否定しすぎじゃない?
 バニラだけなのかな。

 なんでも完璧にこなして。
 陽気で物怖じなんてしない、好奇心旺盛のバニラをいつも羨ましいと思いながら。
 どうして、あんなにも自己評価が低いのだろうと疑問に思ってしまう。

 そんなことを考えながら。
 ぼーんぼーんという柱時計の音が聞こえ、
 ピアノを弾くのをやめた。

 真夜中の演奏会は明日ぐらいから再開しようかな。
 肩をぐるぐると回して、ストレッチをする。
 オーロラ姫は本当に引っ越したのだろうか…
 明日、家の方の様子を見てみようかな。

 結局、彼女はなんのために来たのだろうか?

「マヒル様。お茶でもいかがですか?」

 ちょうど、温かいものを口にしたいと思っていたところに。
 タイミングよくバニラに声をかけられ。
 リビングルームへ向かった。

「わたくしもご一緒してもよろしいでしょうか?」
「もちろん。ありがとう」
 バニラからカップを受け取る。
 ホットミルクが身体にしみこむ。

 今夜は風が強いのか、窓がかたかたと音をたてている。
「太陽様。大丈夫かなあ」
 ぽろりと無意識に出た言葉に、バニラはくすりと笑った。
「イチゴが大変だって言ってたけど。イチゴって逮捕されたんじゃないの?」
 カップをローテーブルに置く。
 今更だけど。
 イチゴがどうなったのかを知らないことに気づいた。

「イチゴ様は初犯扱いになっております上、なにより未成年ですから。保護観察付きで、とある農園で暮らしているとお聞きしました」
「へえー…逮捕もなければ少年院なんかもないんだね」
「ええ。そこは太陽様とナイト様が頭を下げて、なんとかなったようで…」
「結局は権力かあ~。いやになるね。どの国でも」
 万歳をすると。
 蝋燭の火がゆらゆらと揺れた。
「でも、イチゴが農園? 農園って田舎で暮らしてるってこと?」
「ええ、首都からもご実家からも遠く離れた場所で、ご年配のご夫婦様のおうちで暮らされているとか。人と接するにも、制限がかかっているらしく。話せる相手はそのご夫婦様と家庭教師様と、そこの領主様と、神父様だそうで。学校も行くのは許されていないそうです」
「……」
 カップを持ち上げて、私は黙ってしまった。
 あの子が、田舎で。
 限られた人達との生活に耐えられるのだろうか。

「一年以上、大人しく生活されていれば。また元の生活に戻れるという約束だったようですが」
 ふと、バニラはどうしてこんなに詳しいのだろうと思った。
「ある方の情報源ですわ。わたくしから尋ねたのではありません」
「ある方ねえ~」
 誰かというのは、なんとなく想像はつくけど。
 そこは突っ込まないでおこう。

「バニラはさ、イチゴのことどう思う?」
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