あたし恋をしてるかも【恋愛短編集】
ライブハウスに着くと、受付に赤星先輩の姿があった。
先輩とふたりきりで話すのは初めて。
緊張を隠すために、深呼吸をする。
「先輩、こんばんは。」
「茅野さん、来てくれたんだ。」
先輩は嬉しそうに笑ってくれた。
そのことが嬉しくて、私も笑った。
「あの、チケット代って…。」
「いいよいいよ!でもみんなには内緒な。」
チケット代は、赤星先輩が持ってくれた。
遠慮をする私に、1年生の女の子に払わせられるかよ!と、冗談ぽく笑う。
その笑顔は、人見知りな先輩がいつも3年生にだけ見せているのと同じで、私はたまらなくなった。
「先輩、ライブ頑張ってくださいね!」
「おう、ありがとな!」
ポンポン、と私の頭をなでる、先輩のかたい手。
早くなる私の鼓動は、心地よい先輩のベースの音に似ていた。