金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
episode 2ーー小百合

chapter 1ーー望み

「詩月、スマホ鳴ってるよ」

詩月はビアンカに肩を叩かれ、振り返った。

ビアンカはスマートフォンをそっと差し出した。

着信音はショパンの子犬のワルツ、電話の相手は千住小百合だ。

ビアンカに礼を言い、電話に出ると甲高い声で耳が痛かった。

思わず、耳元からスマートフオンを離し、スピーカーに切り替えた。

「何かあったか?」

ーー相変わらず素っ気ないのね。元気にしているの?

「特に変わりはないが」

ーー配信が減ったから心配で。クレア先生に訊いたら、調律の勉強をしているから忙しいのではって言うのよ

「ああ。大学に行きながら、ピアノ工房で働いて、定期的に調律師の学校に通っているからな」

ーー大丈夫なの

「体調管理はちゃんとしているし、今の所は単位も落としていないし、教授とも良好だが」

ーーあなた、周りはいつもハラハラしていること、理解している?


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