金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
詩月は口喧しい看護士みたいだなと思う。

「小言を言いに電話してきたのではないんだろ。要件は?」

詩月は小百合が幼い頃から、話し出すと止まらなかったのを思い出し、話を切り替えた。

ーーそうそう。わたしね、コンクールに出場しているの。コンクールの副賞がスゴいの。何だと思う?

詩月は小百合の声の調子が自棄に明るい気がして、思い当たる節があった。

コンクール期間中は出場しているコンテスタントの演奏が、どれも自分より上手く聴こえる。

自分の演奏がこれでいいのか、楽譜を何度も読み返したり、苦手な箇所でミスをしないか不安になったりする。

ーー副賞がね、半年間ウィーン留学なのよ。スゴいでしょう

「副賞……不安でテンパっているのか?」

ーーウィーン留学でモチベーションを保とうとしているのに……何故それを言ってしまうかな

「今さら、ジタバタしても……最終選考前か? 曲は?」

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