金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
「ーーそうなのか」

「詩月は疎いよね」

ビアンカは肩を落として、ため息をついた。

「ビアンカ、動画どうなった?」

「ええっと……ウワッ」

ビアンカは慌てて動画を止めた。

「録画、止め忘れてた」

「流してないよな」

「LIVEにはしてないから大丈夫。観る?」

「いや、いい。最初から演奏し直す」

ビアンカはサッと気持ちを切り替え、機材を操作する。

動画配信を本格的に始めて2年余り、操作にも慣れてきた。

詩月をどの方向から撮影すれば、1番さまになるかも判ってきた。

「観客席から見えるのは、ピアニストの横顔なんだ。ーーショパンは横顔が美しかった」

詩月はビアンカが動画を撮り始めた時、自慢気に話して聞かせた。

正面から見る詩月の顔は若干、童顔に見える。

対して横顔は曲線にメリハリがあり、艶っぽい。

ーーこの横顔に詩月のファンはメロメロになる

< 21 / 56 >

この作品をシェア

pagetop