金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
「賑やかな人だね。ピアノの彼女とはずいぶん違う」

ビアンカは詩月が電話を切るまで耳を軽く手で押さえていた。

「確かに。言いにくいことも遠慮なしだ」

詩月は小百合の顔を思い出し、フッと笑った。

「来るの? コンクールとか言っていたみたいだけど」

「あの勢いなら勝って、ウィーンに来るだろうな。『雨の歌』を演奏するそうだ。昨年、安坂さんと散々解釈に悩んだ曲なんだが」

「スゴい自信だね」

「やれる、できると言えるまで相当練習したんはずだ。それでも不安で、絶対に優勝してウィーンに行くという目的が必要だったんだろうな」

「優勝して詩月に会いたいんだよね」

ビアンカが目を輝かせて、詩月を見つめている。

「エッ……副賞がウィーン短期留学だからだろ」

「詩月、ウィーン留学はオマケだよ。詩月が居るから副賞を見て、コンクール挑戦したんだよ」


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