金木犀の奏鳴曲(ソナタ)

chapter 2ーー湖畔岸

10月中旬、小百合はウィーンにやってきた。

フランツ・シューベルト音楽院に半年間、留学すると云う。

下宿先は小百合の父親の兄夫婦宅で、ユリウス宅に近いらしい。

「ウィーン、来たわよ」

小百合は詩月のスマートフォンに、元気な声で伝えてきた。

「おめでとう、よく頑張ったな」

詩月が言うと、小百合は一呼吸置いて言った。

「詩月くんと演奏したくてコンクールに挑戦したんだもの。勝って当然だわ」

詩月は自信満々の小百合の顔を思い浮かべた。

「それにしても、MHKコンクールの副賞はオーケストラとの1年間契約ではなくなったんだな」

「それ、あなたのせいだから。あなたが共演した後、団員たちの演奏が劇的にレベルアップして観客動員数もスゴいのよ。昨年、新型ウィルスの拡大でコンサートがWEB配信になった時は、チケットが販売開始7日で完売したのよ」

「僕は何もしていない」
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