金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
ユリウスは気さくに明るい声で話す少女が、「詩月くん」と言ったのを聞き逃さなかった。

「詩月とは親しいのかな?」

ユリウスは真っ直ぐに訊ねた。

「詩月くんとは幼い頃に、一緒にヴァイオリンを習ってたんです」

「もしかして……小百合?」

「ええ。湖畔岸、ジョギングコースにいいですね」

「そうなんだよ。毎朝、1時間半ほど走っているんだ」

「あの……詩月くんのヴァイオリンの、ユリウス先生ですか」

「そう。詩月にはもう会ったかい?」

「いえ、まだ。こちらに着いてやっと落ち着いき始めたところで。詩月くんとは昨日、電話で話しました」

「詩月は色々やっていて、忙しそうだ。体が心配でね。暑さも寒さも苦手だからね」

「幼い頃の詩月くんは冬には、いつも足にも手にも霜焼けができて、真っ赤になっていました。だから体調管理、スゴく慎重なんです」
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