金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
ーー知っているわよ。鈍いわね。一緒にヴァイオリンを演奏しましょうかと言っているの

「ピアノと合わせるものだとばかり考えていたんだが、そういうことなら。『雨の歌』のピアノバージョンを僕が演奏すればいいんだよな」

ーーそうそう。察しが良くて助かるわ。但し、手加減はしないでね。あなたとの実力差がどれほどかを知りたいから

「OK。(はな)から手加減する気などサラサラない」

小百合は詩月の気持ちを聞いて、フフっと笑った。

ーーそうだった。詩月くんはどんな相手でも手を抜かない。真剣に演奏するわね

小百合の胸は久しぶりに詩月のヴァイオリン、ガダニーニの「シレーナ」の生演奏が聴けると思うと、高鳴った。

ーーわたし、湖畔岸を毎朝ランニングしているのよ。ユリウス先生、話しやすい方ね。奥さまをとても大事にしていらっしゃるのが解るわ

「そうだな。たしかに仲が良いな」
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