金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
episode 3ーー讃美歌と……

chapter 1ーー過去の演奏よりも

週末の動画配信は、詩月の体調を考慮して中止になった。

小百合は詩月からの連絡を楽しみにしていたが「中止」と聞いても驚かなかった。

毎朝のランニングでユリウスの休憩する10分は、小百合が詩月の様子を知る時間になっている。

ユリウスから詩月の様子を聞いて程度のことは、察していた。

「小百合、すまないな。大学の課題とピアノ工房でグロッキーだ」

ーー修理依頼、あなたご指名もあるんですってね

「ああ、見習いなのに有難い話だよ」

ーーあなたは調律師である前に演奏者なんだから、手は大事にしなさいよ

「わかってる」

ーーそれから体。無理が()かないんだから。倒れても知らないわよ

「重々承知している。小百合、11月1日の諸聖人の日は、大学も工房も休みなんだが、どうだ?」

ーーえーっと……ミサの後、シュテファン広場でどうかしら?

「ストリートピアノは撤去されて……」
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