金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
ーーあなたにピアノ伴奏を依頼してきた時点で、危機感を感じていたんだわ

「君は簡単に言うんだな。コンクール最終日まで、ずっと気が気ではなかったんだが……それでもトップには届かなかった」

ーーあの入賞は優勝より価値あるものだったわ

「僕は今、過去の演奏よりも君との演奏の方が楽しみだ」

ーー本当に、口が上手いんだから

小百合は詩月に言われ、まんざらではないのか、声が弾んでいた。

「讃美歌の練習もしておけよ」

詩月は小百合との通話を終え、時間を確かめた。

午後8時30分。

詩月は気を取り直し、10時過ぎまでピアノ練習をした。

練習時間が足りないーー改めて実感する。

詩月は練習時間を捻出できない以上、練習内容を向上させる他ないと思った。

ピアノはエィリッヒに、ヴァイオリンはユリウスに相談し、早急に知恵を授かることにした。
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