金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
「聞いています。戦場跡で見つかったピアノだと。かなり修理も必要な代物だとも」

「1度、分解してパーツを交換して……かなり手を加えなきゃ。古いピアノだ。そもそも部品があるかどうか」

「あのBALには随分、お世話になっていますし、思い入れもあるピアノなんです。何とかあのピアノをちゃんとした状態にしたい。それが目標です」

「でっかい目標だな。嫌いじゃないぜ、そういう所」

「ありがとうございます」

「しっかし……そんな細い指で奏でる音色が、あんなスゴい音色だもんな。それにお前が調律するとピアノの深みが格段に上がるんだよな」

詩月は節くれだった先輩調律師の手をしげしげと眺めた。

車のハンドルを握っているが、詩月の真っ直ぐで細い指とは、ずいぶん違うのが判る。

詩月は日頃から手や指のケアを念入りにおこなっている。

調律で爪の間に入った油もその都度、丁寧に洗い流す。




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