金木犀の奏鳴曲(ソナタ)

chapter 3ーーこれでヨシ

諸聖人の日。

続々と礼拝に人々が集う中、司祭がオロオロと慌ていた。

詩月は小百合を待たせてはすまないと、早めに寺院に着いた。

「どうかされましたか?」

詩月は司祭の様子に気づいて、声をかけた。

「それが讃美歌の演奏者がまだ来ていないんです」

「連絡は?」

「いいえ、まだ……」

司祭が言いかけた時、司祭を呼ぶ声がした。

「司祭さま、ピアノ奏者がウィルス感染で来られないそうです」

「困りました……あっ」

司祭は詩月の顔を見るなり、表情が明るくなった。

「演奏してもらえませんか」

司祭は申し訳なさげな声で手を合わせたが、顔には何処か笑みが浮かんでいた。

「構いませんけれど、よろしいんですか」

「ええ。昨日、音確認で弾いてくださったような感じで」

詩月は頷いたが、さすがに昨日の演奏では不味いだろうと思った。
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