金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
翌日、小百合は意を決して出かけた。

弦楽楽器ヴァイオリン科修士課程1年生の安坂貢を見つけるのは、なかなか骨が折れた。

「貢? 日本人? 知らないわ」

「安坂貢? 名前しか知らないな」

「貢……図書館か練習室に籠っているのでは」

何処を聞いて回っても、なかなか接点のある学生が見つからなかった。

ーーウソでしょ。留学して2年余りになるのに親しい学生もいないの?

小百合は不思議でたまらなかった。

ドイツ語に不自由でもしているのか余程、人付き合いが悪いのかと思った。

後、頼みの綱はーーと考えるが思い当たらない。

ーーどうしよう。当てがない

小百合はフーと大きなため息をついて正門の植え込み、レンガの縁に座りこんだ。

ーーん……こういう時、詩月くんなら気分転換にヴァイオリンを弾きながら何か策を考えるのかな

小百合はそう思うと、じっとしていられなかった。

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