金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
詩月にはひと言も喋らせなかった。

ーーあなたのせいで娘はピアニストになれなくなったのに、娘がピアノ教師になるのを応援するですって。娘に2度と近づかないで、かかわらないで

酷い剣幕だった。

詩月はひと言も弁解させてもらえないまま、電話は切れた。

ーーごめんなさい。母が酷いことを言って、ごめんなさい

数分後、折り返しかかってきた電話で、緒方は泣いていた。

「緒方。僕は何を言われてもかまわない。でも、君のお母さん、君のご両親は君がピアノ教師になることに納得していないのか」

ーーいいえ。ちゃんと話して納得してくれたのよ。でも、急に「ヴァイオリンロマンス」の楽譜を観て。わたしのピアノの師匠から何か吹き込まれたみたいで、急にあなたとは別れろと言い出したの

「そうか。緒方、僕は何があろうと君の道を応援しているから。いいな、頑張れよ」


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