金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
「で、郁と周桜のことだけど……周桜には同情するというか、理不尽な話だったんだ」

安坂は咳払いし、どうにも話しにくそうだ。

「郁の母親が周桜に突然、電話してきて喚き散らしたんだ」

安坂はそう切り出し、緒方から聞いた話とビアンカ、ミヒャエル、詩月から聞いた話をポツリポツリと話し始めた。

一方的な話だった。

昨年11月。

緒方郁子のスマートフォンから突然、電話がかかってきた。

ーー周桜詩月さん。あなたのせいで娘はピアニストを諦めることになったのよ。あなたが娘の指を腱鞘炎でダメにしたの。あなたが居なければ、娘は腱鞘炎にならなかったし、ピアニストを諦めなくてよかったのに。全部、あなたのせいよ

詩月はまくし立てる金切り声に戸惑いながら、電話の主が緒方ではなく緒方の母親だと理解した。

ーー周桜宗月の息子だか何だか知らないけれど、娘をまきこんで、娘からピアニストの道を阻んで




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