金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
「そんな……父親が誰だろうと、詩月は詩月だよ」

「緒方のお母さんはそうは思えないんだろう。その上、僕の心臓は生まれつきまともに動いていないし。緒方のお母さんが言うのは最もだ」

「詩月……詩月は何も悪くない」

詩月はビアンカに言われたものの、人には定めがあるのかもしれないと言った。

相思相愛だったとしても、周りの反対があれば結ばれない。

別れなければならない、定めがあるのだと。

半月、執拗にかかってきた緒方の母親からの電話。

その度に緒方は「ごめんなさい」と電話してきた。

その後、緒方は数カ月に1度ほどしか、電話してこなくなった。

詩月は母親の手前、緒方は気が引けるのだと思っているようだ。

と云う内容だった。

小百合は聞きながら何度も口を挟みたくなった。

拳をテーブルの下で握りしめ、懸命に堪えていた。

が、話を聞き終えると、涙が溢れて止まらなかった。



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