金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
「酷い……酷すぎる。詩月くんはお人好しすぎるわ」
小百合は頬に伝ってくる涙を何度も拭い、嗚咽を抑えた。
「俺も話を聞いた時は、煮えたぎるほど腹立たしかったし、周桜が気の毒で……郁には素直に『そうか、大変だな』とは言えなかった。だってそうだろ。実際、ピアニストを諦めたのは郁で、腱鞘炎で演奏できなくなるまでピアノの練習をしたのは他でもない郁だろ。周桜のせいでは決してない」
「わたしもそう思う」
「周桜に追いつきたかった、その気持ちが解らないわけではないし、周桜が追いかけてこいと言ったのは確かだけれど、それを周桜のせいだと言うのは違うだろ」
「その郁子のお母さんを焚きつけたピアノ教師は?」
「郁は母親の電話の件で、ピアノの師匠を解任したそうだ」
「詩月くん。大変な思いをしているのだろうけれど、郁子も辛いわね。」
「もし俺だったら、とても郁を応援する気にはなれない」
小百合は頬に伝ってくる涙を何度も拭い、嗚咽を抑えた。
「俺も話を聞いた時は、煮えたぎるほど腹立たしかったし、周桜が気の毒で……郁には素直に『そうか、大変だな』とは言えなかった。だってそうだろ。実際、ピアニストを諦めたのは郁で、腱鞘炎で演奏できなくなるまでピアノの練習をしたのは他でもない郁だろ。周桜のせいでは決してない」
「わたしもそう思う」
「周桜に追いつきたかった、その気持ちが解らないわけではないし、周桜が追いかけてこいと言ったのは確かだけれど、それを周桜のせいだと言うのは違うだろ」
「その郁子のお母さんを焚きつけたピアノ教師は?」
「郁は母親の電話の件で、ピアノの師匠を解任したそうだ」
「詩月くん。大変な思いをしているのだろうけれど、郁子も辛いわね。」
「もし俺だったら、とても郁を応援する気にはなれない」