金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
小百合は詩月にあっさりと当てられてしまったことに、そんなに自分は判り易いのかと大きなため息をついた。

「緒方のことなら、別に遠慮せず聞いてくれればよかったんだ」

詩月は気にしていたのがバカらしいほど、素っ気なかった。

「別れをどちらから言ったわけではないし、回数は減ったけれど、緒方から連絡もある」

「でも、」

淡々とした詩月の話し方をどう受け止めていいのか、小百合には解らなかった。

「緒方の母親からのあれは、親だから彼女を心配して、当然の言い分だと僕は思っている。留学前に『愛している』と確かに言った。けれど……昨年夏に帰国した時、なんとなく思ったんだ。終わったのかなと」

「え……?」

意外だった。

詩月の口から「終わった」という言葉が出たことに。

「ピアニストの夢が潰えて、ピアノ教師になると聞いた時、そうかとあっさりと言えた自分に驚いたんだ」
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