金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
chapter2ーー
数日後。
詩月は、安坂貢からの電話で、フランツ・シューベルト音楽院からほど近い喫茶店に呼び出された。
「すまないな。わざわざ出向いてもらって」
「いえ。日曜日は工房も休みですし、息抜きにもなりますし。此処、いいですね。雰囲気がモルダウに似ていて」
「だろう。俺も初めて来た時、思ったんだ」
「音大学生の演奏がBGM、懐かしいです」
「俺も何度か演奏したが、評価はけっこう辛口だ」
「そうですか。で、話と云うのは小百合……千住の件か緒方の件ですか」
「ああ。千住があまりに深刻そうな顔をしていて、隠せなかった」
「僕は別に。緒方のお母さんには言われても仕方ないことですし。緒方が腱鞘炎になったことは緒方自身のことだとは思いますけど、緒方との実力の差が思っていた以上にあったことを見抜けなかったのは、僕の落ち度でした」
「それはーー郁自身の」
詩月は、安坂貢からの電話で、フランツ・シューベルト音楽院からほど近い喫茶店に呼び出された。
「すまないな。わざわざ出向いてもらって」
「いえ。日曜日は工房も休みですし、息抜きにもなりますし。此処、いいですね。雰囲気がモルダウに似ていて」
「だろう。俺も初めて来た時、思ったんだ」
「音大学生の演奏がBGM、懐かしいです」
「俺も何度か演奏したが、評価はけっこう辛口だ」
「そうですか。で、話と云うのは小百合……千住の件か緒方の件ですか」
「ああ。千住があまりに深刻そうな顔をしていて、隠せなかった」
「僕は別に。緒方のお母さんには言われても仕方ないことですし。緒方が腱鞘炎になったことは緒方自身のことだとは思いますけど、緒方との実力の差が思っていた以上にあったことを見抜けなかったのは、僕の落ち度でした」
「それはーー郁自身の」