金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
淡々として話す詩月の声も表情も明るい。
「見られたくない姿も観られてますから、気がねがいらない。楽ですね、素の自分で居られる」
安坂は「ほ〜お」と詩月を見入った。
「今、思うと僕は緒方と居る時、緒方と話す時、常に気が張っていたように思います。……こう有らねばならないみたいな」
染み染みと話す詩月の顔はどこか清々しかった。
「ライバルの前では失敗したくないと、気負っていたんだと思います。だから、緒方が悩んでいたことにまで気づけなかった」
「ん……そんなにまで思う必要が? ライバルの前では誰でも颯爽としていたいだろ。お前は郁に『愛している』と言ったんだよな」
「ええ、言いました。留学する前に、出発ロビーでーー渡航すればしばらくは会えないと思うと、他に言うべき言葉はあったかもしれませんけれど、咄嗟に出た言葉は……バカですよね」
「見られたくない姿も観られてますから、気がねがいらない。楽ですね、素の自分で居られる」
安坂は「ほ〜お」と詩月を見入った。
「今、思うと僕は緒方と居る時、緒方と話す時、常に気が張っていたように思います。……こう有らねばならないみたいな」
染み染みと話す詩月の顔はどこか清々しかった。
「ライバルの前では失敗したくないと、気負っていたんだと思います。だから、緒方が悩んでいたことにまで気づけなかった」
「ん……そんなにまで思う必要が? ライバルの前では誰でも颯爽としていたいだろ。お前は郁に『愛している』と言ったんだよな」
「ええ、言いました。留学する前に、出発ロビーでーー渡航すればしばらくは会えないと思うと、他に言うべき言葉はあったかもしれませんけれど、咄嗟に出た言葉は……バカですよね」