金木犀の奏鳴曲(ソナタ)
「後悔しているのか」
「ーーわかりません。緒方のお母さんからの電話を聞いて、言うべきではなかったとも思えて、でも僕はあの時たしかに緒方を大事に思っていたし、今も緒方には笑顔でいてほしい。電話口で泣きながらの緒方の『ごめんなさい』は聞きたくない。緒方に毎回『こめんなさい』と言わせている自分が情けないんです」
「お前はお人好しが過ぎる。郁の母親は郁の決断に納得していたんだ。それを郁のピアノ教師が『ヴァイオリンロマンス』の楽譜を餌にして唆したんだ。お前に落ち度はない。それに、あの曲を演奏したいと頑張っていたのは何より郁自身だ」
「安坂さん、緒方には『追いかけてこい』が負担だったんでしょうか?」
「おい。じゅうぶん後悔しているじゃないか」
詩月は静かにカップを手にとった。
「さあな〜。俺たちは、俺も理久もあの『追いかけてこい』はお前の郁への告白だと思っていた」
「ーーわかりません。緒方のお母さんからの電話を聞いて、言うべきではなかったとも思えて、でも僕はあの時たしかに緒方を大事に思っていたし、今も緒方には笑顔でいてほしい。電話口で泣きながらの緒方の『ごめんなさい』は聞きたくない。緒方に毎回『こめんなさい』と言わせている自分が情けないんです」
「お前はお人好しが過ぎる。郁の母親は郁の決断に納得していたんだ。それを郁のピアノ教師が『ヴァイオリンロマンス』の楽譜を餌にして唆したんだ。お前に落ち度はない。それに、あの曲を演奏したいと頑張っていたのは何より郁自身だ」
「安坂さん、緒方には『追いかけてこい』が負担だったんでしょうか?」
「おい。じゅうぶん後悔しているじゃないか」
詩月は静かにカップを手にとった。
「さあな〜。俺たちは、俺も理久もあの『追いかけてこい』はお前の郁への告白だと思っていた」