君の隣で、私になれた


「……私。」

声が少し震える。

「どうしたらいいのか…」

「分かんない」


その言葉が出た瞬間。


張りつめていた何かが。

少しだけほどけた。


琉生はすぐには答えなかった。

少しだけ考えて。

私の方を見た。


「だったら、ちゃんと話せ」

私は顔を上げる。


「逃げんな。」


「湊さんとも…」

少しだけ間が空く。

「俺とも」


「……え」

「避けられる方も結構しんどい」

琉生は少しだけ笑う。


その笑顔が胸に刺さった。

いつものふざけた表情じゃない。

少し寂しそうに笑う。


私は…

琉生まで傷付けていた。


「……ごめん」

また謝る私に。

琉生は少し困ったように笑う。

「だから。俺に謝らなくていい」


「でも、ちゃんと話せ。」

「逃げるな。」


その言葉は。

背中を押す言葉だった。


責める言葉じゃなかった。


私を。

前に進ませる言葉だった。


私は友達を失いたくない。

湊も失いたくない。


そして。


琉生も失いたくなかった。

恋じゃない。


でも。

この人は私にとって。

失いたくない大切な人だった。



「……逃げない。」

「ちゃんと話す!」

「湊とも。みんなとも。」


琉生は安心したように笑う。

「それでいい。」


その一言で。

私はやっと前を向けた。




ーー琉生side.


莉桜は笑っていた。

さっきまでより少しだけ。


ちゃんと笑えていた。


これでいい。

あとは逃げなければ大丈夫だ。


俺はそう思っていた。




この時は。

まだ知らなかった。




「逃げるな」

と背中を押したことが。


これから先。


俺たちの距離を。

少しずつ変えていくことになるなんて。


ーーー琉生side end.


< 137 / 308 >

この作品をシェア

pagetop