君の隣で、私になれた


ーー女の子の部屋。


部屋。

ソファに並んで座る。

「飲む?」

「ありがと。」


テレビが流れている。

他愛ない話。


「神崎くんってさ…」

「思ったより静かなんだね」

「そう?」

「みんなといる時と全然違う」

俺は少し笑う。

「2人だとこんなもん」


少し沈黙。


女の子が自然に距離を詰めてくる。

俺は避けない。

目が合う。

ふっと笑う。


「緊張してる?」

「少し…」

「可愛い」

女の子の髪を軽く耳にかける。

そのままキスをする。


俺の首に細い腕がまわされて。

そのままベッドに倒れる。

次は女の子から。

しかも絡み合う本格的なキス。

自分から体に触れてくる。


「…すご、積極的」

「…嫌?」

「…全然。むしろ良い」

少し笑うと。

女の子も嬉しそうに笑う。


そのまま胸元に顔を埋める。

「…あっ…待っ……ん、」

言葉では制止される。

でも首に回された腕は離れない。


逆にもっと引き寄せられる。

俺はそのまま流れに身を任せた。




ーー翌朝。


「神崎くんと付き合いたい…」

俺は困ったように笑う。


「ごめん。彼女はいらないかな」

「……そっか」

「期待させたならごめん」

そっと女の子の頭を撫でる。


「ううん。最初から言ってたもんね」

「うん」



ーー…


「またね!」

「またね。」

玄関が閉まる。




外はもう夜じゃない。

薄暗い朝の街。


1人で歩く。


さっきまで笑っていたのに。

表情は静かだった。



駅へ向かう道。


前から若い夫婦。

お父さんの腕の中で眠る小さな女の子。

お母さんが笑う。


何気ないただの日常。



俺は少しだけ目で追った。

そしてまた歩き出す。



胸の中には。

何も残っていなかった。


楽しくないわけじゃない。

嫌でもない。

でも。


どこかいつも少しだけ。

足りない。


何が足りないのか。

自分でも分からなかった。




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