君の隣で、私になれた


「そうですね」

俺もまた笑う。

「だから相手の気持ちは…」

「ちゃんと聞くようにしてます」


「……。」


また少しだけ空気が変わる。


俺は何も知らない。

湊さんはそう思ってる。


でも。

あの日のことも。

莉桜が泣きながら話してくれたことも。

全部知ってる。


もちろん。

そんなことは言わない。


湊さんも。

知られているなんて思っていない。


だからこそ。

この会話は成立している。


でも噛み合ってはいなかった。



「神崎くん」

静かな声。

「莉桜、今は本当に楽しそうなんだ」

「だからこのままでいてくれたら嬉しい」


その言葉だけは本音なんだろう。

そう思った。


「はい。」

自然と口が動く。

「俺も莉桜が笑ってる方がいいんで」


湊さんは小さく頷く。

「……そう。」

その返事だけだった。


また沈黙。


相変わらず…

苦手だ。

たぶん向こうも同じ。

仲良くなることはない。


でも、嫌いだからじゃない。


価値観が根本から違う。

そんな気がした。





その時。


「湊!」


聞き慣れた声が。

門の向こうから聞こえた。


小走りで莉桜が来る。


「ごめん!待った?」


さっきまでとは別人みたいに。

湊さんの表情が柔らかくなる。

「全然」

「お疲れさま」

莉桜は自然に笑う。


そしてこっちを向く。

「え、琉生!?」

「なんで湊といるの!?」

莉桜が目を丸くする。


俺はいつものように笑う。

「偶然ここで会った!」

「ね。」

湊さんも少し笑う。

「なんか変な組み合わせ!」

3人で少し笑う。


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