君の隣で、私になれた

第36話「友達として」



ーーー大学。

ーー琉生side.


三田キャンパス。


経済学部の講義が終わる。

校門へ向かって歩く。

冬の冷たい風。


ふと門の前に立つ男が目に入った。



「……。」

あの日ぶりに見る顔。


「神崎くん」

先に声をかけてきたのは向こうだった。

「久しぶりです」

「久しぶり」


莉桜の彼氏。

湊さん。


少しだけ沈黙が流れる。


その沈黙が居心地悪くて口を開く。

「今日はなんでこっちに?」

「莉桜を迎えに」

「最近忙しくて時間が合わないから」

「…そうなんですね」


また少しだけ静かになる。


湊さんがふっと笑った。

「そういえば…」

「去年はいろいろ大変だったね」


…たぶん噂のこと。


「俺も驚きました」

「学生ってすぐ噂になるから困るよね」

笑っている。

でも目は笑ってない。


「莉桜も結構気にしてた」

「誤解されるのが一番嫌な子だから」

「……。」


知ってる。

そう思った。

でも口には出さない。

「そうですね」


「だから…」

湊さんは穏やかに続ける。


「距離感だけは気を付けてあげて」

「友達として」


一瞬だけ空気が張る。


誰が聞いても普通に彼氏の言葉。

でも分かる。


牽制。


俺は笑った。

「もちろんです」

「俺は…」

「本人が嫌がることはしないんで」



「……」


ほんの一瞬。

湊さんの表情が止まる。


でもすぐに笑った。

「そう。なら安心だね」


また静かな空気。


「莉桜って人を信じやすいから」

「優しい分、勘違いされやすい」

「だから。」

「周りがちゃんと距離を守ってあげないと」

穏やかな口調。


でも。

湊さんが伝えたいことは分かる。


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