君の隣で、私になれた


ーーー帰り道。

ーー湊side.


車が走る。

静かな車内。


助手席では。

莉桜が窓の外を眺めていた。



赤信号。

ブレーキを踏む。


さっきの会話が頭をよぎる。


『俺は本人が嫌がることはしないんで』


『相手の気持ちは』

『ちゃんと聞くようにしてます』


「……。」


偶然か?

まさか知ってる…?


俺が以前。

莉桜にしてきたことを。


もし知ってるとしたらどこから…?



信号は赤のまま。

視線を横へ向ける。


莉桜。

マフラーに顔を少し埋めて。

穏やかに笑っていた。



「莉桜。」


「ん?」

いつもの返事。

その笑顔を見た瞬間。


「……」

聞けなかった。


『神崎くんに何か話した?』

その一言が。

喉まで出かかった。


でも飲み込む。


「……いや、何でもない」

「…?」


莉桜は何も気にせず笑う。

その笑顔を見て。

アクセルを踏んだ。



……まさかな。

考えすぎか。


そう思おうとする。



でも、もう一つだけ。

引っ掛かった言葉がある。


『俺も莉桜が笑ってる方がいいんで』


『俺も』…

あの言い方。

友達だから?

本当にそれだけか?


それとも…



信号が青に変わる。

車が動き出す。


助手席では。

莉桜が今日の出来事を楽しそうに話し始める。

「今日ね──」

笑っている。


その横顔を見ながらふと思った。


神崎くんは。

本当に“友達”…

それだけなんだろうか。


そして。


もし違うなら…

気付いていないのは。

本人だけなのかもしれない。


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