君の隣で、私になれた


ーーー居酒屋。


乾杯をして。

3か月分の話が一気に始まる。



「で。」

紅羽がジョッキを置く。

「みんなどうなの!社会人!」



「じゃあ紅羽から」

新が紅羽を指差す。

「毎日終電……」

「うわ、夢ない」

琉生が笑って突っ込む。


「聞いて!」

「編集部全然キラキラしてない!」

「撮影!校正!修正!徹夜!えぐい!」

新が少し笑う。

「雑誌見る目変わる」

「ほんとそれ!」

「モデルさんより裏方の方が走ってる!」

紅羽の勢いにみんなが笑う。



「新は?」

「仕事」

「それは知ってる!」

紅羽が即ツッコむ。

「図面。現場。図面。現場……」

「それしかしてない」

淡々と答える。


「え、それ楽しいの?」

紅羽が聞く。

「楽しい」

即答だった。

「やっぱ仕事人間になったか」

「前からだけど」

変わらない新にみんなが笑う。



「莉桜は?」

琉生が私を見る。

「やっと訓練がおわって……」

「1か月前からフライト始まった!」

「おー!CAっぽ!」

「まだ国内線だけど毎回緊張する」

「でも…やっとCAになれた感じ!」

自然と笑顔になる。


「初フライト泣いた?」

紅羽が聞く。

「ちょっとだけ?」

「やっぱ泣いたんだ」

案の定ってかんじでみんなに笑われる。



「琉生は?営業どう?」

「まぁまぁかなー」

「まぁまぁ?」

新が笑って言う。

「琉生、電話で自慢してきた」

「え?」

「新人で3か月でその台数は異例って」

「店長も上司もべた褒めらしい」


「え?まじ!?」

私と紅羽は同時に驚く。

「すごい……」

「それなんで言わないの!」

紅羽が琉生の肩を叩く。

「別に言うほどじゃない」


「わざわざ電話してきたくせに?」

新が呆れたように笑う。

「黙れ、新」

新が首を振る。

「やっぱこいつは普通じゃない」

「完全に天才型」


「やっぱ琉生、営業向いてるね!」

私が言うと。

「どうやら向いてるらしい」

琉生は少し照れたように笑った。


その笑顔は。

大学生の頃と変わらない。


でも。


仕事の話をする横顔だけはみんな。

少しだけ大人になっていた。



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