君の隣で、私になれた
第50話「結婚しよう」
ーーー湊の部屋。
久しぶりに。
ふたりでゆっくり過ごせる休日。
温かい紅茶を飲みながら。
何気ない話をして笑う。
そんな時間が。
少しだけ。
懐かしかった。
「莉桜。」
湊が優しく私の名前を呼ぶ。
「ん?」
「卒業したらさ」
そして優しく笑う。
「結婚しよう」
「……!」
思わず言葉を失う。
ずっと思い描いていた未来。
大好きな人と結婚して。
家族になる。
胸が熱くなる。
「……ほんと?」
「うん」
嬉しくて涙が出そうだった。
でも。
次の一言で時間が止まる。
「だから。」
「CAを辞めてほしい」
「……え?」
「専業主婦になって家にいて」
「俺が養うから」
「結婚したら働かなくていい」
頭が真っ白になる。
「……なんで?」
やっとそれだけ聞けた。
「男がいて男に笑う仕事だから」
「もう続ける必要はない」
「結婚したら家庭を優先して」
「……っ」
胸が苦しくなる。
卒業式の日。
『莉桜なら絶対大丈夫』
湊は笑って送り出してくれた。
あれは嘘じゃなかったはず。
だから。
まだ私は信じたかった。
「湊。」
「この前ね、先輩に相談したの」
湊が少し驚いた顔をする。
「最近、仕事のことで悩んでて」
「先輩がね。」
『本当に好きな人を想うなら』
『夢を諦めさせる前に』
『応援する方法を一緒に考える』
「そう言ってくれた」
「私もそうだと思った」
「だから辞めるじゃなくて、」
「どうしたら湊が安心できるのか」
「それを一緒に考えたい」
顔を上げて湊を真っ直ぐに見る。
「私、仕事は続けたい」
「やっと叶えた夢なの」
「お願い!一緒に考えたい。」
必死だった。
きっと話せば分かってくれる。
そう思っていた。