君の隣で、私になれた


「……そうか」

新が小さく呟く。

「うん。」

莉桜は笑う。

けど全然笑えてない。


しばらく沈黙。


その沈黙を破ったのは紅羽だった。


「私、少し前に莉桜から相談受けてた」

俺と新は顔を上げる。

そして紅羽の方を見る。

「…話してもいい?」

紅羽が聞くと莉桜は静かに頷く。


「莉桜、プロポーズされてたの」

「……」

その言葉で息が止まる。


プロポーズ。

そこまで進んでたのか。

知らなかった。

何も知らなかった。


「でも…莉桜は返事してなかった」

俺と新は表情が止まる。

莉桜は俯いたまま静かに聞いてる。


「条件があったから……」

「CA辞めてほしい」

「専業主婦になってほしいって。」

「俺が養うからって。」


頭の中が真っ白になる。


それは……

さすがに駄目だろ。


ずっとCAになる為に頑張ってた。

そしてその夢を掴んだ。

それを全否定するってことだ。


心の中で。

初めて湊さんを否定した。


横で新が顔をしかめる。

「……は?」

それが率直な反応だった。


「莉桜は仕事辞めたくないって」

「ちゃんと話したらしい。」

「どうしたら安心してもらえるか…」

「一緒に考えたいって」


「……でも。」

「方法なんてない、辞めればいい。」

「それしか言われなかったって」


店の空気が静まり返る。


新が小さく息を吐く。

「……それは違うだろ」

静かな声だった。

怒っている。


初めて見る。

新のこんな表情。


俺も新と同じ気持ちだった。


紅羽は続ける。


「あと。」

「大学の頃から少し束縛はあったみたいで」

「一回落ち着いたみたいだけど」

「社会人になってまた戻ったって。」


「飲み会でお酒飲まなかったのも…」

「二軒目行かなかったのも…」

「全部、湊くんとの約束だったんだよね?」

「……うん」

莉桜は小さく頷く。


あの時。

俺は気付いてた。


でも。

想像してたよりずっと酷かった。



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