君の隣で、私になれた
話題を変えるように。
助手席を軽く叩く。
「そういえばこの席……」
「ん?」
「経済の子たちに言われたんだけど」
「私しか乗ったことないって」
琉生は少しだけ笑う。
「あぁ、あれほんと」
「みんな乗ってるのかと思ってた」
「乗せてない」
「なんで?」
少しだけ沈黙。
「乗せたいって思わなかった」
「……。」
「じゃあ紅羽は?」
「えぇ?」
思わず笑う。
「私だけ?」
「うん。」
「助手席は莉桜しか乗せない」
あまりにも自然に。
当たり前みたいに言うから。
言葉が出ない。
「……なんで?」
なんとか言葉を一言だけ絞り出す。
琉生は少しだけ笑った。
「乗せたかったから」
それだけ。
本当にそれだけだった。
胸がまた少しだけ高鳴る。
でも、すぐに首を振る。
……琉生だから。
昔からこういう人だもん。
そう思いながら。
ひざ掛けをぎゅっと握る。
車は赤レンガへ向かって走り続けた。
ーーー赤レンガ倉庫。
平日だけどやっぱり人気で。
たくさんの人で賑わっていた。
「すごい人!」
「多いなー」
歩き出そうとした瞬間。
「あ。」
前から人の波が押し寄せる。
そのまま歩こうとすると。
琉生が。
さらっと私の手首を掴んだ。
「こっち」
人混みを抜ける。
抜けたところで。
何事もなかったみたいに手が離れた。
「ありがとう」
昔から。
琉生はこういうところがある。
自然に助けて自然に離す。
だから。
特に気にしたことなんてなかった。
「何食べる?」
「チュロス!」
即答すると。
「はいはい、買いに行こ」
琉生が笑う。
「あ!」
財布を出そうとした頃には。
もう会計が終わっていた。
「また!私払う!」
「いらない」
「でも……。」
「いいから早く取れ」
チュロスを渡される。
「ありがとう」