君の隣で、私になれた
第62話
ーーー社会人3年目の初夏。
ーー琉生side.
「今日さ、少し寄りたいとこある」
助手席の莉桜が笑う。
「いいよ!」
仕事終わり。
いつものように羽田まで迎えに行って。
ご飯を食べて。
他愛もない話をして。
車を走らせる。
いつも通り。
……のはずだった。
でも今日だけは全然違う。
営業中も。
ご飯を食べてる時も。
運転してる今も。
ずっと。
『今日、気持ちを伝える』
それだけが頭の中を巡っていた。
海沿いの駐車場へ車を停める。
「少し歩こ」
「うん」
夜風が心地いい。
波の音だけが静かに響いていた。
2人並んで歩く。
しばらくお互い喋らない。
「莉桜。」
足を止める。
「ん?」
振り返った莉桜と目が合う。
ここまで来て。
初めて少しだけ怖くなった。
もし笑われたら。
もし困らせたら。
もし全部が勘違いだったら。
でも。
もう引き返したくなかった。
「俺さ。」
少し笑う。
「今まで恋愛って全部受け身だった」
「誰かが俺を好きになって、」
「俺はその手を取るだけ」
「だから……」
静かに息を吐く。
「自分から好きになったのは」
「莉桜が初めて」
莉桜が静かに目を見開く。
「自分から好きになって、」
「こんなに苦しいなんて知らなかった」
「毎日会いたいって思うし、」
「笑っててほしい、守りたい、」
全部。
初めてだった。
「莉桜。」
一歩近付く。
「莉桜のことが好き」
「友達としてじゃなくて、」
「一人の女性として好き」
「俺と付き合ってください」
静かになる。
波の音だけが聞こえる。