君の隣で、私になれた
「じゃあ俺も…」
男の人は片手を上げた。
「神崎琉生。慶應経済一年」
「人と喋るのが好き!」
にこっと笑う。
「よろしくー」
たったそれだけなのに、
不思議と人を惹きつける。
この人はたぶん、
どこへ行っても友達ができるタイプだ。
「見た目通りチャラそう」
紅羽ちゃんが即座に言った。
「なんでだよ!」
「なんかチャラさが溢れだしてる!」
「自己紹介しただけなんだけど!」
みんなが笑う。
初対面とは思えない空気だった。
すごいな。
初めて会ったばかりなのに。
こんなに自然に話せるなんて。
私は人見知りではない。
誰とでも普通に話せる。
でも、
初対面の相手と。
こんな風に場を盛り上げるのは苦手だ。
だから少しだけ羨ましかった。
次はみんなの目線がもう1人の男の子へ向く。
「…関谷新」
短く名乗る。
「慶應理工一年」
それだけ。
それ以上はない。
「え?終わり!?」
紅羽が叫ぶ。
「終わり」
「情報少なすぎるって!」
「自己紹介だろ」
「最低限すぎ!」
紅羽ちゃんが騒ぐ。
でも新くんは気にする様子もない。
表情もほとんど変わらない。
一見すると近寄りがたい。
頭には剃り込みも入ってて少し怖そうにも見える。
だけど――。
さっき店員さんが運んできた水。
それを机の端にいた私が取りやすい位置へ。
何も言わずに置き直していた。
そういうところを見ていると、
本当に冷たい人ではない気がした。